先日、友人の紹介で、ある女性起業家さん(仮にSさん)のサイトリニューアルの依頼を受けました。色々とお話をうかがう中で、現在のサイトを制作した会社の実態が明らかに……
Sさんは、その制作会社に毎月15,000円(税別)払っているのだそうです。支払いの名目は、「ホームページ運営管理費」とのこと。
「どんな管理作業をしてもらってるんですか?」と私がうかがうと、Sさんは暗い表情でボソッといいました。
「特に何も……」
とはいえ、月々15,000円も取っているからには、Sさんがご存じないだけで、実際はちゃんと管理作業をしているのだろう。私は、内心でそう思っていました。
だから、Webサイトの管理作業のアレコレをSさんにご説明したわけです。
保守管理費用に含まれるもの
保守管理費とか、ホームページ運営費という名目の料金に含まれるものとして代表的な項目をあげてみます。
まずは、
・独自ドメイン管理
・サーバー管理
これはその制作会社自体が管理運営するサーバーで、ドメインを運用しているケースにあたります。サーバーを使わせてもらっているのですから、サーバー利用料が発生するのはしごく当然です。
ところがSさんの場合は、Xserverとお名前.comに更新料を支払って、ご自身で管理していました。だから対象外ということです。
つづいて、
・システムのアップデート
・各種プラグインのバージョンアップ
・連携しているツール類の管理
なども保守管理費に含まれることが多いもの。
SさんのHPは、WordPressで制作しています。WordPressは、頻繁に仕様変更やバージョンアップが行われることで有名。さらに、インストールしているプラグインもたびたびバージョンアップが必要です。
だから、常にメンテナンスを行わないと、エラー表示が出たり、悪くするとサイト自体が真っ白!になることもありえます。
WordPressはとても優れたCMSですが、ただしく安全に利用するためには、けっこう手がかかるのがネックです。だからこそ、常に「保守」する管理者が不可欠で、ふつうは制作担当者がその役を担っています。その点でも、「保守管理費」が発生するのは当然なわけです。
ところがSさんのホームページを作った会社は、サイトの納品以降(4年前)は、全くのノータッチなのだとか。
一昨年、何かの拍子にページが非表示になったことがあったそうです。Sさんがあわてて救援をもとめたら、臨時メンテナンス代金として、なんと!約10万円の請求が来たというじゃないですか。
それ以来、Sさんは怖くなって、WordPressのダッシュボードにどんなにたくさんの更新通知(丸アイコン)が表示されていても、見て見ぬ振りをしているとのこと。
どうりで。
私が実際にダッシュボードにログインさせてもらったときには、更新通知のアイコンが16個も(笑)WordPressのバージョンもかなり古いまんまだし、テーマの更新通知もたまっていたし、リンクエラーの通知数もとんでもないことになっていました。
ほかに考えられるのは、
・バックアップ
・セキュリティ
これらの作業もサイト管理には必須ですから、管理費に含まれているのが普通です。
でも、みたところSさんのHPには、バックアップ機能は入ってないし、セキュリティ対策もしていません。バックアップもセキュリティも対策していない状態で、未来永劫なにごともなく済むなんてありえないのです。継続的に保守やメンテをしてはじめて、安全なサイト運営ができるというもの。
あと保守管理費として考えられるのは、電話やチャットなどを利用したサポートをしてもらえるとか?
Sさんいわく、
「何度かメールしたんですが、『もっと具体的に書いて』とか『担当者に確認します』とかでちゃんと返信がもらえなくて……」
だそうです。
「じゃ、もしかして、記事の修正やページの追加などは、無料でやってもらえるとか?」
コレも多分違うだろうと思いつつ、一応聞いてみました。案の定、違いました。
ホームページ上で提供しているサービスや商品の金額の修正や、追加のお知らせなどは、WordPressのブログ機能を使ってSさん自身がチマチマとやっているそうです。
話を聞けば聞くほど、さすがに私も不信感でいっぱいになって来ました。
その制作会社が毎月徴収している15,000円というお金は、いったい何のための料金なんだ~??お金だけとって何もしないのは、詐欺みたいなものじゃないか!?
お仕事の対価として料金をいただく
結局、「ホームページ運営管理費」という名目のお金をとりつつ、それらしい作業は何ひとつしていなかった件の制作会社。
ご相談を受けている最中に、ZOOM画面の向こうでSさんは泣き出しました。この4年の間、不満と不信感がたまりまくっていたのでしょう。
そもそものHP制作費も約60万円もかかったそうです。失礼ながら、その料金だけの価値があるとはとても思えない(ダサい)サイト。それに加えて、4年の間で70万円近い「運営管理費」というムダなお金を払ってしまったSさん。
お気の毒でなりませんでした。
あってはならないことですが、この手の不誠実な制作屋ってけっこう存在します。そういう輩のおかげで、Web関連の会社や制作者全体が、「うさんくさい」と思われがちなのです。ただし、そんな悪徳な会社や制作者はほんの一部で、ほとんどは、しっかりと保守やメンテナンスをやっているはず。
このSさんのケースとは逆に、私たち制作側が、
「これくらいタダでやってよ」とか
「もっと安くして」とか
「ついでにココとココとココも直して」とか…
そんな理不尽な要求をされることがしばしばあります。修正と追加の依頼を延々と繰り返す、モンスタークライアントも少なくありません。
私の場合は、保守管理費として月々3,000円いただいているのですが、これまでにおひとりだけ、
「こんなお金は払いたくない」
とゴネられたことがあります。
保守管理に関わる様々な作業って、時間も手間も取られるものです。それに見合った対価をいただくのは当然のこと。払えないとおっしゃるなら仕方ありません。その方とは、こちらから契約を解消させていただきました。
契約書は重要
何かしらの仕事をしてその対価をいただくのは、どんな仕事でもあたりまえのこと。
たとえば、エステサロンを例にすると、10回コース◯◯円みたいに、けっこう高額を払っていただいたからといって、11回目以降は無制限に「タダ」にしたりしないはずです。
お客様は費用を払って、時間や物や成果を受け取る。
サービスや商品を売る方は、支払ってもらった料金に見合うだけの仕事をする。
すべてのビジネスは、とてもとてもシンプルな仕組みです。
それなのに実際には、Sさんのような悲しい状況が起こったり、作業量に見合ったお金をいただけない制作者がいたり。そんな悲しいことが起こってしまっています。
世の中のどんな業種にも、「良し悪し」があるもの。
ホームページをどこに依頼するか。当たり外れがある中で、どうすれば「ハズレ」を引かずにすむのか。それをお客さま自身で、見極めろというのはムリな話です。
だからせめてもの安全対策として、ホームページの制作依頼をするときに、ちゃんと「契約書」を取り交わしましょう。
しっかりした契約書を出せる業者は、少なくてもSさんの関わった会社みたいに「詐欺まがい」のことはしないはずです。
それに、きちんとした内容の契約書は、依頼される制作者側も守ってくれます。
業務の範囲がどこまでか。
どんなときに追加料が発生するか。
修正は何回までか。
常識を越えた要求はのめない。
などなどをしっかり契約書に盛り込むことで、先に書いたような「モンスター客」の理不尽な要求を回避できます。
「契約書」
とっても大事ってことです。
ちなみに私自身は、制作デザイン&ライティングの請負業務を本格的に始めたときに行政書士さんにお願いして「契約書の雛形」を作りました。
もうひとつ参考までに。
ホームページの保守管理費用や運営費の最近の相場ですが、平均1万円(月額)ぐらいかなって印象です。WordPressやHPレンタルサービスが広まってからは、自分で管理できる人も増えました。だから、ひと昔前のように何万円も管理費がかかるのって、企業ページぐらいじゃないでしょうか。
もしも、個人契約なのに、けっこうお高い管理費を支払っているとしたら、その料金に含まれている作業はどのようなものか。
どこまでのめんどうをみてもらえるのか。そういうことを制作屋さんサイドに、きちんと確認してみると安心ですね。
編集後記
大好きだったドラマ「MIU404」が、終わってしまってすでに半月以上。いまだロスが癒えない日々です。
今さらながら思い出すのが、「MIU404」の名セリフの数々。
中でも、主役の志摩一未のことばは、何度も脳裏をよぎります。
「誰と出会うか。出会わないか」
深いなあ。
良い出会い。悪い出会い。出会う相手の良し悪しで、人生の良し悪しまでも違ってきます。
ホームページの制作の話だってそう。良い人に頼むか、何もせずに金だけ取るようなところに頼むか。天と地ほど結果は違うということです。
あなたに良い出会いがありますように♡
それでは、また来月(^_^)/~
優子